深夜の2時とかまで仕事が長引くときがあります。終わった時にはものすごくお腹が空いている。こういう時にこそうまいものが食べたいけど、あんまりいい店がない。六本木とか銀座の鮨屋は朝までやっているところがありますが、先週も3回行ったからちょっと気分を変えたい……。
最近、和食派の友人に良い割烹を紹介してもらいました。これが、閑静な住宅街にあるのに、深夜3時までやっているお店でして。品の良い看板が光っているきりで、カウンターだけの店内もうるさくない。この時間に新鮮な野菜の、揚げたての天ぷらが食べられるのは本当にありがたいです。僕がそこに行くのはいつも平日の1時とか2時とかなんですが、だいたい一組か二組、入れ違いになる形でお客さんがいます。あまり顔を見ないようにはしていますが、どういう客層なのか大将に聞いてみたところ、本当に口コミで客が来るからばらばらのようです。
会社勤めとか、低収入のフリーランスとかしていた頃は、こういう店が存在することすら知りませんでした。金持ちや有名人が行く店といえば思い浮かぶのは、せいぜいが銀座・六本木・中目黒・代官山ぐらいで。そういういかにもな場所には、プチ有名人がいっぱいいます。でも本物はいない。プチ有名人は雰囲気にお金を払いますから、出される料理の質は必ずしも保証できない。
その点、こういうひっそりとした場所にある店は、しっかりしています。この店を目がけて来ないと、「通りすがりにふらっと」はまずありえないですから。はっきりこの店の料理を目指してきてくれた人に、適当なものを出せないですよね。覚悟が違うなという感じがします。
その店の大将は口数が少ないです。カウンターの向こうで黙々と料理をしている。その手さばきは、素人が見ても美しいと感じます。一人で食べに行くと、どうしても手持無沙汰になるので、じっとその手付きを見ることになります。お客さんにずっと見られている状態で無駄口を叩かずに料理を続けるというのは、手順の無駄のなさに自信があるからこそできることだと思います。
僕自身、こんな風に、自分の仕事ちゅうの手元を見続けられて、平気でいられるか?
自問してみると、その難しさが良く分かります。
このお店は、ごく身近な友人とだけ行くようにしています。